犬はームプレーヤチー、猫は戦略家?最新科学が明かす「モフモフたちの思考回路」

「犬は忠実で、猫は気まぐれ」 私たちが昔から抱いてきたこのイメージ、実は最新の科学研究によって、もっと深く、もっとエキサイティングな形で裏付けられつつあるのをご存知でしょうか?
愛犬家と愛猫家が永遠に議論し続けるテーマ「どっちが賢いの?」、それぞれの「賢さの種類」が全く違うという面白いお話をしていきましょう。
結論から言うと、犬は「組織で生き抜くエリート社員」であり、猫は「一匹狼の冷静な投資家」なのです。
1. 犬の知能は「同調」と「協力」に全振りされている
まず、犬の賢さについて見てみましょう。犬がなぜあんなに私たちの顔色を伺い、空気を読むのが上手いのか。それは彼らが「チームプレーヤー」として進化したからです。
「指差し」を理解するのは人間と犬だけ?
心理学の有名な実験に「ポインティング・タスク(指差し課題)」があります。隠されたおやつの場所を指で示すと、人間以外の霊長類(チンパンジーなど)は意外にもこれを理解するのが苦手です。しかし、犬は生後間もない子犬の頃から、人間の指が「情報のヒント」であることを理解します。
これは、犬が人間の社会に溶け込み、協力して獲物を追うために、相手の意図を汲み取る「社会的認知能力」を特化させた結果です。アリゾナ大学の研究によれば、この能力は遺伝的に組み込まれており、訓練以前の問題なのだそうです。
犬は「損」をしても仲間を助ける?
さらに驚くべきことに、大学の研究では、犬には「公平性」の感覚があることが示されました。隣の犬だけがおやつをもらい、自分がもらえない状況が続くと、犬は握手などの指示に従わなくなります。これは「不公平」を感じる高度な社会性を持っている証拠です。彼らにとって、コミュニティのルールを守ることは生存に直結する重要な知能なのです。
2. 猫の知能は「物理」と「因果」に強い
一方で、猫はどうでしょうか。「呼んでも来ない」「勝手気まま」。これだけ見ると、犬より知能が低いように思えるかもしれません。しかし、猫は「物理法則」に関しては非常に高いスペックを持っています。
猫は「物理」を理解して狩りをする
大学の研究チームが行った面白い実験があります。箱を振って音が鳴るか鳴らないかを見せ、その後に箱をひっくり返すというものです。 猫は「音が鳴る=中に物がある」という因果関係を理解しており、音が鳴ったのに中身が出てこないといった「物理的に不自然な状況」に直面すると、長く凝視することが分かりました。
猫にとっての賢さとは、誰かの顔色を伺うことではなく、「目の前の獲物がどう動くか」「この草むらの中に何かが潜んでいるか」を物理的に予測することに特化しているのです。
「無視」は知能の高さの裏返し?
大学の研究では、猫は飼い主の声と他人の声を明確に聞き分けていることが証明されました。それなのに、なぜ呼ばれても無視するのか? それは、猫にとって「声に反応して駆け寄る」という行動が、自分の生存戦略(エネルギー温存や安全確保)においてプライオリティが低いからです。つまり、「分かっているけれど、あえてやらない」という、高度な意思決定を行っている戦略家と言えるでしょう。
3. 脳のニューロン数は「犬」の勝ち、でも……
「賢さの指標」としてよく持ち出されるのが、脳の皮質にあるニューロン(神経細胞)の数です。 2017年の研究(Frontiers in Neuroanatomy)によると、
- 犬:約5億2,900万個
- 猫:約2億5,000万個 という結果が出ています。
単純な計算処理能力で言えば、犬は猫の約2倍のスペックを持っていることになります。しかし、これはあくまで「道具」の性能。猫はその2億5,000万個のニューロンを、極限まで効率化された「狩りのシミュレーション」に使い、犬は5億個を「複雑な人間社会の読み取り」に使っているのです。
まとめ:彼らはそれぞれのプロフェッショナル
犬は、あなたと一緒に「一つのプロジェクト(生活)」を成功させようとする最高のパートナーです。 猫は、自らの知略を駆使して「快適な環境」を勝ち取る、独立心豊かなプロフェッショナルです。
どちらが優れているかではなく、どちらの「賢さ」に私たちが魅了されるか。それが答えなのかもしれません。
次にあなたの愛犬が期待に満ちた目であなたを見つめたとき、あるいは愛猫があなたの呼びかけを華麗にスルーしたとき、こう思ってください。 「ああ、今日もプロの仕事(チームプレーと戦略)をしているな」と。
参考文献
- Genetic variants are associated with individual differences in cognitive abilities,Bray et al. (2021),10.1038/s41598-021-82038-x
- The absence of reward, but not the cost of a response, influences the social control of barking in dogs,Range et al. (2009),10.1073/pnas.0810952106
- The domestication of social cognition in dogs,Hare et al. (2002),10.1126/science.1072702
- There’s no shaking the cat’s belief in cause and effect,Takagi et al. (2016)
- Vocal recognition of owners by domestic cats,Saito & Shinozuka (2013)
- Dogs have more neurons than cats,Olkowicz et al. (2017)
- What's inside your cat's head? A review of cat cognition,Vitale & Udell (2019)


